一触にして良媒 HELLO GOODBYE

名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター 環境材料研究グループのブログ

論文小論文

こんにちは。学部4年の中村です。

私事ではありますが、1つ話をさせていただきます。

 

というのも最近、「論文」について聞かれることが多いです。

小論文と論文はどう違うのか? レポートと論文もどう違うのか? そもそも論文とはなんなのか?

と問われると私としても曖昧な返事をしてしまいがちです。そこで「論文」について考えてみました。 

 

まず論文について大まかに説明しますと、

「ある要素・観点によって新しく生まれた事柄・意見を体系立ててまとめたもの」

といえます。

つまり要素・観点のないもの(データの集まり)や、新しい事柄・意見のないもの(過去と同じ内容)、

体系立ててまとめていないもの(日記や主観的な書き物)は、論文ではないということです。

 

次に具体例で論文を説明しますと、

科学分野で、アルミニウム合金に新しい元素を加えて、その強度の変化を調べる、という内容なら、

要素・観点(新しい元素を加える)、新しい事柄・意見(調べた結果)を満たしているので、

あとは体系立ててまとめれば論文になります。

また数学分野で、四色定理の証明をスーパーコンピューターによる新しい方法で行う、という内容なら、

定理自体は変わらないので新しくないですが、その過程が新しいので論文になります。

また文学分野で、宮沢賢治萩原朔太郎の比較による考察、という内容なら、

彼ら2人の著作に限らず、その著作に対する批評を読み、

また作者・著作の地域に出向いて追体験を行うなどにより新しい事柄・意見が生まれるので、

読書感想文の形には留まらず、論文になります。

 

次に論文のランクについて説明しますと、

大学卒業のための論文は通常、学生と指導教員、そして近い分野の教員によって著述し、

内容をチェックします。これは大学の外を出ないために客観性が小さいものになっています。

対して学術論文は、同じ分野の研究者(つまり世界規模)によってチェックされ、

内容が認められた上で学術雑誌(natureなど)に掲載されたものをいいます。

専門外の人にとって学術論文は難解ですが、専門家にとって研究の進退がかかっている一大事なので、

とても重要な意味を持っているといえます。

 

一方、論文に関して、詩的でありながらも上手い言い回しを見つけましたので、

その引用で締めさせていただきます。

 

たとえば、僕が交通事故で今死んでしまったら、

僕のファイルにあるデータの意味は誰にもわからなくなってしまうにちがいない。

それらを誰にでもわかるようにしておくこと、つまり文章として書き記すこと、一種の遺言のようなもの、

それが、すなわち論文なのだ。

――森博嗣『喜嶋先生の静かな世界』

 

 

1週間以内を目処に更新します。さようなら。